アドラー心理学の目的論は、過去の原因ではなく、現在の行動の目的を重視する考え方です。
この目的論を日常生活や仕事で活用することで、より建設的な行動を促し、より良い人間関係を築くことができると考えられています。
実際にうまくいった人もいるかもしれません。
ただすべての人がうまくいくのでしょうか。
本記事では、いくつか想定できることを考えながら、アドラー心理学の目的論を上手に活用する方法をまとめてみたいと思います。

目的論とは何かを改めて整理する
アドラー心理学の根幹には「人の行動には必ず目的がある」という考え方があります。
たとえば「会社に遅刻した」という出来事があったとき、原因論では「寝坊した」「電車が遅れた」といった過去の出来事に焦点を当てます。
一方、目的論では「遅刻することで何を得ようとしたのか?」という、現在の行動の意味を探ります。
この視点の大きな違いは、「原因」では変えられない過去に縛られるのではなく、「目的」という未来に向けた選択肢に焦点を当てられる点です。
もちろんすべての行動に意識的な目的があるとは限りませんが、無意識のうちに取っている行動にも必ず「役割」や「意味」が潜んでいるという前提に立ちます。
目的論を日常で活用するメリット
目的論を生活に取り入れると、まず「自分の行動をコントロールしている感覚」が強くなります。
たとえば人間関係でトラブルが起きたときも、「相手が悪い」という原因探しから、「自分は何のためにこの発言をしたのか」と自分の目的に目を向けられるようになります。
これにより、以下のようなメリットが期待できます。
- ネガティブ感情から早く切り替えられる
→原因論は過去の分析に時間をかけやすいですが、目的論は「これから何をするか」に意識を向けるため、立ち直りが早くなります。 - 他人との関係改善につながる
→相手の行動を「何のためにしているのか」と想像することで、感情的な反応を抑えられる場合があります。 - 主体性を持って動ける
→目的を明確にすることで、自分の行動に納得感が生まれ、惰性や流されることが減ります。
目的論を実践する際の注意点
目的論は非常に建設的な視点ですが、活用する上でいくつか注意点があります。
1つ目は、自分の本当の目的を正確に把握できないことがあるという点です。
人は無意識のうちに自己防衛的な行動を取ります。たとえば「忙しい」と言い続ける目的が、実は責任を回避するためだった、ということもあります。
2つ目は、他人の目的を決めつけないことです。
「きっとあの人はこういう目的で動いている」と断定してしまうと、むしろ人間関係がこじれることがあります。目的は本人にしか分からない部分が多いという前提を忘れると後で痛い目に合ってしまうかもしれません。
3つ目は、無理やりポジティブな目的を作らないことです。
目的論は「ポジティブ変換」とは違います。
現実から目をそらし、「これはきっと良い経験になる」と言い聞かせすぎると、問題解決の行動を先送りしてしまう可能性があります。
上手に活用するためのステップ
目的論を日常でうまく使うには、小さな場面から試してみるのがいいかもしれません。例えば以下のような感じです。
- 行動や選択を客観的に振り返る
→その日の出来事を1つ選び、「なぜそうしたのか」を自分に問いかけます。 - その行動の目的を書き出す
→ポジティブでもネガティブでも構いません。まずは正直に書くことが大切です。 - 目的が建設的かを評価する
→その目的が自分や周囲にとってプラスに働くかどうかを判断します。 - より良い目的に置き換えてみる
→もし目的が破壊的なら、代わりにどんな目的を持てば行動が変わるかを考えます。
これを繰り返すことで、無意識に取っていた行動も意図的にコントロールできるかもしれません。
例1:職場で同僚のミスを指摘しなかった場合
- 行動や選択を客観的に振り返る
→今日、同僚が資料に間違いを見つけたが、あえて指摘しなかった。なぜそうしたのかを考える。 - その行動の目的を書き出す
→「相手を傷つけたくなかった」「関係が悪くなるのが怖かった」「自分の仕事を増やしたくなかった」など、率直に書き出す。 - 目的が建設的かを評価する
→「相手を守るつもりだったが、結果的に取引先への提出資料に誤りが残る可能性がある」=長期的にはマイナス。 - より良い目的に置き換えてみる
→「ミスを早めに共有することで、相手の信頼を守る」「チーム全体の成果を高める」という目的に置き換えれば、適切な指摘の仕方を選べる。
例2:友人の誘いを断った場合
- 行動や選択を客観的に振り返る
→友人から食事に誘われたが、「忙しい」と言って断った。本当の理由を考える。 - その行動の目的を書き出す
→「今は一人で過ごしたかった」「人混みが苦手」「お金を使いたくなかった」など正直に書く。 - 目的が建設的かを評価する
→一人の時間を優先するのは悪くないが、関係が疎遠になる可能性もある。 - より良い目的に置き換えてみる
→「次回会う時に元気な状態で会いたい」「本当に興味のある場で友人と過ごしたい」という目的にすれば、代替案(別日や別の場所)を提案できる。
例3:会議で意見を言わなかった場合
- 行動や選択を客観的に振り返る
→会議で自分のアイデアを言わずに終わった。なぜそうしたのかを考える。 - その行動の目的を書き出す
→「間違っていたら恥ずかしい」「上司に否定されたくない」「時間を延ばしたくなかった」などを正直に書く。 - 目的が建設的かを評価する
→短期的には安全策だが、長期的には存在感を失い評価が下がる可能性がある。 - より良い目的に置き換えてみる
→「自分の考えを共有してチームのアイデアを広げる」という目的に変えれば、簡潔に発言する工夫ができる。
うまくいかない人はおそらく複雑に捉えすぎてしまって、思考が混乱してしまうかもしれ無いのでいくつか事例を用意してみました。
ただ根っからのめんどくさがり屋などもうまくいかないかもしれません。
まとめ
アドラー心理学の目的論は、「過去」ではなく「今と未来」にフォーカスする思考法です。
原因を探して立ち止まるよりも、目的を見つけて一歩進むことに重きを置きます。
もちろんすべての場面で万能ではありませんし、自分や他人の目的を誤解するリスクもあります。
それでも、日常の小さな選択から目的を意識する習慣を持つことで、行動の質や人間関係が大きく変わる可能性があります。
自身の行動の原因を振り返る場面ってたくさんあると思いますが、結局原因がわからないまま終わってしまうこともあります。
その思考法のひとつとしては参考になるかもしれません。
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